年老いた「たぬき」は、すっかり店に居ついていました。とうとう物置小屋の扉はあってなし、開けっ放しになりました。それでも、私が行くと飛び上がって驚いたりしました。
ある日、まん丸顔の大きな茶トラ猫が現れました。意地悪そうにたぬきを威嚇しました。たぬきは一目散に裏の林の中へ逃げていきました。「えっ?あんたにゃ餌はやらないよ!」と私は言いました。
それでも茶トラは時折現れてはたぬきを追い払いました。私がにらみつけるとすごすごと後ずさりするのですが、すぐに戻ってきて餌を掠め取ってがつがつ食べました。私はそのふてぶてしい態度から「ボス」と呼びました。
「ボス」を見かけるようになってから数ヶ月過ぎました。
「あれ、ボスどうしたんだろ?!」と思いました。少し見ないなと思っていたら明らかに小さくしぼんでいました。目つきもいつもの鋭さがありません。それにたぬきにすりすりと寄り添っているのです。