暑い暑い夏が過ぎていつの間にか秋が忍び寄っていました。秋は、ある朝空の高いところからストンと落ちて、落ちて降り積もり降り積もりやって来るのです。
それでも私は時々思い出したように「茶介..」と名前をつぶやいていました。余り悲しみすぎてはいけないんだと、自分に言い聞かせていました。
ある日、店の裏手に新入りが姿を現しました。まだ、大人になりきっていない黒とこげ茶の汚いやせっぽちでした。
かわいい声で「にゃぁ」と鳴きました。餌をやると上目使いで警戒をしながらもがつがつと食べてさっと逃げていきました。
汚いやせっぽちは、ほかの猫たちとは違いました。後ろ足が長めだからか腰高でがに股、おもしろい歩き方です。それから尻尾、よぉく見ると尻尾の長さは5センチメートルぐらいあるのですが、その付け根からポキンポキンと折れ曲がってまるで尻尾が無いように見えたのです。早速名前は「しっぽなし」と呼ぶことにしました。