蝉、食らう!

 ききょうとすみれがいるのが当たり前となり、ご近所さんも気が付いておみえか否か、お叱りを受けることも無く季節が移ろっていきました。いつの間にか梅雨も明け、みんみん蝉の賑やかさがやってまいりました。

 私の部屋は、背の高い木立の緑をぬけてくる風が心地よくエアコンもありませんでした。木枠の窓、少し歪んだガラスに網戸もないレトロな部屋を借りていました。天気の良い日は留守中も南側のベランダは開けっ放しでした。

 仕事帰りに大好物のスイカを丸ごと1個買い求めて階段を上り、鍵を開けました。

「ただいまぁ!」

「みぃや」

ききょうがお出迎えしてくれました。いつもはすぐに足元へ来て身体をなすり付けゴロゴロのどを鳴らして挨拶をするのに、今日は珍しく猫すわりをして長い尻尾をゆらゆら動かしています。重いスイカを下げて部屋へ上がると、すみれの方はこれまた珍しく座布団で丸くなっていて顔も上げません。

 洗濯物を取り入れようとベランダへ出ようとすると、

「ぎょぉ! 何?」

蝉の頭のないのがいくつも転がっています!!

「ききょう!すみれ!! 何したの??」

私はパニック寸前!

「おまえたち、猫だったのね!」

 

 どうやら、ベランダにやってくる蝉狩りを楽しんだようでした。夏の間中、猫たちは蝉狩りを楽しみました。私はしぶしぶ後始末をし、夜風に吹かれながらスイカを夕食代わりに食べて夏が過ぎていきました。暑くて眠れない夜を1週間ぐらい乗り越えるとみんみん蝉がつくつくぼうしに変わり、秋風が吹く頃となりました。

つづく