猟師の長老がおっしゃったそうです。
- 『お命、頂戴いたします。』そして、食ってやる。 -
ああ、私は、幼い頃の父の言葉を思い出しました。
もう、父が亡くなって三十数年が過ぎ、記憶の奥底に埋もれていました。
私は、お恥ずかしながら好き嫌いの多い子供でした。そんな私が父に言われたことでした。父はよくいろいろな価値観や考え方を話してくれました。
「きみこ、みんなみんな生きているのだよ。
鶏も豚も犬も猫もみな同じだ。
米の一粒からすべての野菜も魚も、
味噌もしょうゆも元をたどればみんな生きている。
生きているものの命をうばって分けてもらっているのだ。
だから、お前は自分で生きているのではなく、
分けてもらった命に生かされているのだ。
感謝をして、有難くいただきなさい。」
「人は他の動物たちより罪深い。
動物たちは、自分の命を存えるために、種の保存のために、
他の命を奪う。
だが、人は損得のためにも、わが欲望を満たすだけのためにも
他の命を奪うのだから。」
それでも、私の偏食はなかなか治りませんでしたが、大人になるにつれて少しずつ何でも食べれるようになりました。今日の私があるのは、知らず知らずの内にあの頃の父の言葉が私の中に染み込んだからなのかもしれません。
「 食べることとは命をいただくこと、
そして繋いでいくこと。
だからこそ、食材を活かし
丁寧いに仕込みをして
より美味しく
お召し上がりいただきたいのです。」
これは料理を生業とする者としての古川も思いでもあります。私も日頃の忙しさに紛れ忘れていることをもう一度改めて心に刻み、感謝の気持ちを抱いてさらに心をこめておもてなしをしようと思いました。
ふるかわ きみこ
自宅の庭に咲いたバラ「バフビューティ」
一輪手折ってあしらう。
消毒無・肥料無でも繰り返し咲く強い品種、
中輪咲き、優しい香りがします。